
間違いを受け入れる
◆10月のご挨拶
みなさまこんにちは、いよいよ10月に入りました。今年も残り3ヶ月を切り、サークル活動も2ヶ月ほどとなりました。私の暮らしているBellevueは日を追うごとに秋が深まり、どんぐりや落ち葉が地面を染める時期になりました。今朝は7度まで冷え込み、子どもたちの送迎の際は厚手のジャケットにするか手軽なフリースにするか必要以上に悩んでしまいました。今年の春から野球を始めた長男の練習に付き合っているせいか、日焼けの具合だけを見るとまだまだ夏を引きずっています。
◆こぎん刺しひざ掛け制作
6月はマラソン大会に向けての練習、7月はキット制作に専念、8月は日本旅行を存分に満喫したため、9月は久しぶりにこぎんひざ掛け制作に集中しました。10月頭、いよいよ明日で糸が無くなるなと胸が高まっていた矢先、最後に近い頂点が布の上半分と下半分で1段ずれていることが発覚しました。胸がざわついたまま刺し間違いの場所を確認すると、半年以上前に刺していたであろう位置、現在地から140段も遡ったところでした。こちらの作品は図案こそ制作していないものの、一定のリズムの上に成り立っていますので、そのリズムが乱れた位置があったということです。しかも、そのリズムの乱れは、上(または下)半分の左右異なる段(2つ目は100段遡ったところ)で1段ずつ発生していました。見事に左右1段ずつ間違っていたため、間違いに気づく頃には上半分の世界としては整っており、休み休み、さまざまな心のコンディションで制作していた本人には気付かない仕組みになっていました。
◆間違ったらどうするか
刺し間違ったらどうしますか?とSNSでアンケートをとったところ、回答くださった方の半分以上の方が直すと答えてくださいました。直さないと答えた方も半分には届きませんでしたが割と多くいらっしゃり、こぎん刺しの面白さだなと頷いていたところでした。私の場合基本的には直しています。理由は規則正しく整っている方が美しいと思ってきましたし、残念なことに間違いのもつ美しさをこれまで知らなかったからです。刺し間違いは、今回の私の作品のような場合には「間違い色」が強まりますが、リズムの乱れが目覚ましになったり、新たな模様に発展するような嬉しいアクシデントになる場合もあるように思います。こちらに関してはまた今度深く探ってみます。
◆作品の経過として間違いを受け入れる
今回の作品は、もともとは一昨年koginbankさんにご依頼いただき制作したブランケットの試作品でした。当時は十数段刺して、布と糸の具合や模様の大きさの加減を確認するためにこちらの布にこぎん刺しを施しました。それをこの度のサークル活動の制作目標に据え、制作してきました。今回間違いが発覚した時、1)刺し直す、2)刺し直さない、随分と迷いました。刺し直すのが面倒というのもありましたし、刺し直したつもりが新たに刺し間違えるという可能性も大いにありましたので(恐ろしいことに何度も経験しています。)、刺し直すにも勇気が要りました。同時に、作品の2箇所で明らかにリズムが狂いっていることを知っていながら完成と受け入れることも勇気が要りました。直さないことに勇気が必要と感じるのはそういうこぎん刺しばかりやってきたツケかもしれません。無意識のうちに、「正解」を勝手に心に築いてきたのだと思います。正解なんてないのにも関わらずです。
一方で、この間違いは、図案に書いた作品を刺すことでは生まれないある意味で貴重な経験でした。また、「こっそり間違っている」といういたずらのような感情を持つのは楽しいことでもありました。そんなわけで、制作の日々を思い出す材料としてもこのまま進めることに決めました。
◆間違いの中に美を見る
刺し間違いを受け入れる経験をして、こぎん刺しに向き合う心が軽くなった気がしています。すでに受け入れながら制作している方にとっては小さすぎる決断なのですが、これまで「間違ったら直す」とロボットのように無意識に糸を抜いていた私からすると、小さなドキドキがあるような体験です。もちろん、先ほど挙げた面倒という気持ちと、再度間違う心配をもうしなくても良いという点ではただホッとしています。(呪われたように間違いを繰り返すときもあります。)
上下対照でない、左右対称でない(模様によってはそもそも対象ではありませんが一定の規則があります)ことで、リラックスした気持ちになります。大袈裟かもしれませんが、「どうせ間違っているところがあるから大胆に使おう」とおおらかな気持ちさえ生まれます。ここでのポイントは、「意図せず」規則から外れてしまったというところです。こぎん布の上という小さな世界の出来事ですが、こぎん刺し軸で生きている私からすると、日々の暮らしの中にも取り入れていきたい考え方になりました。ちょっとした間違いが、緊張感を和らげる、なんだか美しさを見出せたように思います。偶然の産物と思うと、とても幸運に恵まれたように感じませんか?頑張っても間違うことができないからこその価値がそこにあります。
今日のブログは、自分の間違いを一生懸命正当化している可哀想な人にも読めなくもないですが(笑)、直すことにも美があり、直さないことにも美がある、どちらを選んでもそこにしっかりと人間とこぎん刺しの美しさがあることをお伝えしたいことをここに記しておきます。
◆シアトルでこぎん刺し紹介をします
改めてお知らせしますが、来月11月2日、シアトルにあるワシントン州日本文化会館で開催される文化の日のイベントで、こぎん刺しを紹介する機会をいただきました。一時帰国時にゆめみるこぎん館へ訪問した理由の一つでもあります。今月は刺すことと同時にこぎん刺しについて考えることにも重点を置いていきたいと思います。どうぞ、2025年残りの数ヶ月もよろしくお願いいたします。
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