布と糸を知る3(重さ)

◆布と糸を知る3
 
前回の記事、布と糸を知る2では、布についての言葉や布1cmあたりの目数をご紹介しました。本日は模様を見比べる予定でしたが、その前に、布の重さをご紹介します。
 早速ですが、下の写真、どの布が重そうに見えますか?織り糸の本数を近付けるために、カウント数の近い、こぎん刺しによく用いられる布を並べています。

(麻布と綿布で重さに違いはあるでしょうか?目数によるでしょうか?)

◆布の重さを知る
 布は全て横8cm、縦13cm(織り糸1本程度の誤差あり)、1g単位で測定可能な家庭用電子スケールで測定しました。下が測定結果です。予想と比べていかがでしたか?何か気付くことはありますか?
 布の目が細かい=面積内の織り糸の本数が多いことになります。織り糸の数に比例して布の重さも大きくなるのでは?と単純に考えられますが、結果を見てみると、糸の種類(麻、綿、麻レーヨン混紡)や織り糸そのものの太さ等、重さに影響を与える素材の要素がいくつかありそうです。

(手に持った感覚での違いも感じます)

◆布の重さと目数の比較
 下の写真は、目数と重さの関係も確認できるよう、2つの情報を載せています。目の細かな布だからと言って、単純に重いわけではなさそうです。そもそも、目の細かな布を実現するには、織り糸の太さを細くする必要が出てきそうですね。
 どんな気付きがあるでしょうか?麻布よりも綿布の方が重そうですね。同じ綿の織り糸で、ほぼ同じ目数でも、ニューコングレスとペリープルが5gに対して、koginbankオリジナルこぎん布は8gです。布に近づいてみると、織り糸の太さが違って見えます。ざっと考えただけでもいくつもの気付きが出てきますね!下に同じ目数の布の重さを記しておきます。

⚪︎縦約7目、横約9目/cm
 こぎんドゥエル(麻)5g麻252(麻)5g、ダルマ(麻)5g
⚪︎縦約7目、横約8目/cm
 ペリープル(綿)5g、ニューコングレス(綿)5g、koginbankこぎん布(綿)8g
⚪︎縦約6目、横約7目/cm
 ファンシーヘッシャン(麻※レーヨン混紡)8g
⚪︎約8目/cm(20ct)
 Zweigart コーク(麻)7g、オリムパスリネン(麻)4g
⚪︎約7目/cm(18ct)

 ケンセンコングレス(綿)10g、Zweigartダボサ(綿)7g、ルシアンコングレス(綿)8g

 (表にしたらわかりやすそうですね。)

◆Weber-Fechner’s law(ヴェーバー‐フェヒナーの法則)
 ヴェーバー‐フェヒナーの法則という言葉を聞いたことがあるでしょうか?検索してみるとわかりやすい例がたくさんあるのですが、例の一つに、「手のひらに載せた重し100gに10gを加えると重くなった感覚があるが、1000gに10gを加えても重くなった感覚はない。しかし1000gに100gを加えると重くなった感覚がある」とありました。「人間の感覚の大きさは、受ける刺激の強さの対数に比例する」そうです。また、これは各個人により違いに気付く基準が異なるそうです。

◆感覚を研ぎ澄ませ、手や目、耳などで材料を味わう
 なぜここでこの話をしたかというと、これからおそらく感覚の話が続くことになり、その感覚値は個人により感じやすさ(違いを感じる基準値)が異なります。私が「感覚の違いを感じるレベル」とみなさんのレベルは当然異なります。大切なのは、当然ですが私の感覚でなく、みなさん個人の感覚です。
 手や目で経験したことはこの先もずっと財産になっていくと思いますので、たくさんを比較する必要はないと思いますが、お手持ちの材料だけでも、ぜひ材料探求の時間を設けてその違いを感じてみてください。普段何となく触っている材料の個性が目の前で溢れ出してくるようで、とっても、楽しい時間になると思います!
 3日目にしてまだこぎん刺しすらしていません。夏休みの自由研究に似た調査になっていく予感です。どうぞ、引き続きよろしくお願いします。

 

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◆調査内容に関して
 個人でこぎん刺しをお楽しみいただく方に向け情報で、さとの坊が自宅保管した材料で調べた内容です。保管環境によりお手持ちの布とカウント数のずれや重量に相違が出る場合があると思いますが、ご了承ください。また、写真の無断使用はお断りいたします。 楽しいこぎん時間になりますように。

◆参考
コトバンク,「ウェーバー‐フェヒナーの法則」, https://kotobank.jp/word/ウェーバー‐フェヒナーの法則-1507555,(2023年6月7日)

空間情報クラブ,「ウェーバー・フェヒナーの法則,  https://club.informatix.co.jp/?p=7106(2023年6月7日)

Satonobou