こぎん刺し模様を楽しむ2

◆自分らしく楽しむ
 先日のブログこぎん刺し模様を楽しむ1では、こぎん刺しは楽しみましょう!というのを伝えられたかな、と思います。間違った時にそのまま進みたい人はそのまま、直したい人は直す、図案を先に書きたい人は書く、書きたくない人は書かない。どんな方法が楽しいかは人それぞれで、窮屈に感じることなく、のびのび楽しめる方法で楽しんだらいいと考えています。
 もしも初心者で右も左もわからない時に、「図案を書いてからこぎん刺しをしなさい」と言われたら、どうですか?頭の中で「図案を書かないと、こぎん刺しをしてはいけない」に変換される方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんなことありませんよね。昔々、母が娘にこぎん刺しを教えるときに、必ず図案を書いたのでしょうか?
 本やキットの図案がすでにあるのであれば、それを見て刺したらいいと思います。もしもその図案を書いた方が図案理解が進むのであれば書いてから刺したらいいと思います。楽しい方で、行きましょう?どの方法でも、こぎん刺しです!

(オリムパスのこぎん糸で和らしい竹をイメージして色選びをした作品です)

◆たくさんの「楽しい」に出会う
 今回の記事の写真や上の写真の作品は、こぎん刺しを再開した頃(手本通りに刺すのをやめた時期)に制作したものです。図案集やkoginbankさんのオンラインのモドコDBで刺してみたい模様を見つけては、アート作品として、制作を楽しんでいました。そして、そのときになんとなく隣り合わせてみようと隣り合わせた伝統模様同士が共鳴しているように感じた経験が、先日の日本民藝館展の作品を制作する土台になったと思います。こぎん刺しの伝統模様って、一体なんなんだ?すごい!この感覚が私に伝統模様を惹きつけ続けています。

(隣り合わせることに徹した作品、糸は越前屋の刺繍糸マタルボンです)

◆伝統模様の魅力と底力
 モドコ(こぎん刺しの基礎模様)を見ると、大体が菱形で、それらを隣り合わせたり合体させることができます。色々な種類を刺していると、宗派のような、これはこのモドコと同じ匂いがするな、みたいな感覚が養われていくのですが、そのグループ内で選んだ模様同士を隣り合わせると、まず間違いなくいい感じになる印象があります。しかしながら、異なる宗派のモドコを隣り合わせても、「お?こうきたか?いいかも。」と、モドコの底力を見る機会に恵まれます。各々のモドコから溢れ出す個性を包み込む柔軟さというか、他を受け入れる能力をも備えたことがモドコと名乗ることができる要素なのでは、と勝手に感じています。思い込みなので、この文章は全く伝わらないかもしれませんが、伝統模様にはその魂のような芯のようなものを感じ、虜になっています。この要素は時代を経て角が取れてきた(モドコは至って尖っているのですが(笑))模様だからこそ持ち得るのではないかと考えています。
 もっと時間をかけて、この伝統模様を軸にした作品を制作し続けると、さらに自分にとって大きな気付きと出会えるのかなと期待したりしなかったりです。

◆伝統模様の柔軟性
 
上の写真は日本民藝館展の作品(koginbankさん出品、こぎん刺し部分をさとの坊にて担当)をズームしたものです。大きな菱形がいくつかあり、その周りを即席の模様で囲んでいます。同じリズムで進めなくなった部分はリズムを変えてそれなりのこぎん刺しっぽさ(感覚ですみません)を持って閉じているのがわかると思います。以前の私であれば、調子が乱れた場合は糸を抜いて整えた方がいいのかも!と思っていたのですが、一度「できる範囲で整える」を経験をすると、閉じる部分が近付いてきたときに、ゲームをしている感覚になり、楽しくなるんです。100点を目指してゴールするというよりは、70点を取りながら次のステージに進み続けて、100点は経験しない代わりにたくさんのステージを経験して最後にゴールする感じです。
 このゲームが楽しいと感じるかどうかには各人の美学があると思いますし、性格があると思いますので、誰でもやってみたいゲームではないと思うのですが、面白そうだと感じた方には、ぜひぜひ楽しんでいただきたいです。たった1度楽しむだけでも、こぎん刺しに広がりを感じると思います。いずれこの行き当たりばったりを楽しむキットが作れたらいいなと考えています。

◆2023年のお礼
 2023年も、大変お世話になりました。minneに加え、こちらのSatonobouのホームページのショップもオープンし、たくさんの方にご利用いただきました。また、津軽工房社さん、koginbankさんでキットをお取り扱いいただき、より多くの方にキットを楽しんでいただく機会に恵まれました。弘明寺のハンドメイドショップNiddy Noddyでのワークショップ、朝日カルチャースクールでの講座等、直接お話ししながらこぎん刺しを楽しむ時間はいつも特別でした。
 今年は作品制作や海外転居もあり活動が不安定でしたが、それでも全ての方が本当に優しく、いつも温かい言葉をかけていただき、明るい気持ちでこぎん刺しと関わることができました。こぎん刺しを通してのご縁にはいつも有難い気持ちでいっぱいです。自分にできる形で恩返しを継続していきたいと思っています。
 来年は夏頃に一時帰国を予定しており、その期間にキット販売ができたらと考えています。ブックカバーキットは新作をご紹介できるよう準備をしていきます。また、更新が止まっておりました材料研究もいよいよ再開できそうです。未来のことはまだわかりませんが(笑)、一旦このような意識で動いてまいります。
 (船便が届き、3ヶ月ぶりに再開したこぎん、どちらも大きな作品制作に向けて制作したものです)

 心にも、体にも、どうぞよいお年を。

 

▶️材料研究ブログ(年明けに再開予定です)

▶️ショップ(来年の一時帰国の際は期間限定で営業予定です)

▶️Instagram(動画などでこぎん刺しのシンプルさをお伝えしています)

 

Satonobou