布と糸を知る11(麻252)

◆布と糸を知る11(麻252)
 
前回の記事、布と糸を知る10では、麻252ファンシーヘッシャンの布の違いを、マクロレンズで撮影した織り糸や布の表面がよく見える写真も合わせて確認していきました。目の粗い布は刺しやすいのか?目の細かい布は見づらいのか?今回の研究を通して、様々な疑問の答えに少しでも近付いていきたいと思います。
※布名のアルファベット、糸名の数字は便宜上振ったものです。

◆麻252基本情報
⚪︎素材 麻100%
⚪︎1㎠あたりの目数 縦:横:7:9(目視測定)
⚪︎購入店 ホビーショップ (有)つきや:弘前市土手町
⚪︎購入時期 2020年〜2022年頃(ロットによる差の可能性を考慮し記載)
⚪︎展開色や価格等の商品情報は直接店舗にお問い合わせください。

(ざっと見た感じは、このような布です。)

◆麻252の印象(さとの坊調べ)
⚪︎
表面にふわふわした繊維がある▶️こぎん刺しで糸が通る時にザラザラした感じがする
⚪︎面として柔らかい▶️柔らかな優しい風合いの印象
⚪︎織り糸は動きづらい(揺らがない)▶️針で織り糸を割ることはなさそう

 下の写真は、同じくつきやで販売されている綿布G.ニューコングレスと比べた写真です。麻と綿の繊維の特徴、紡績工程の違いがあるのかもしれませんが、A.麻252の織り糸の太さのばらつきが面白いですよね。これまで調べてきた感覚的には、織り糸の太さのばらつきは麻と綿の綿の素材間の違いのように思います。また、表面のぱやぱやした繊維も麻布によく見られる特徴のように感じます。

  ズームすると、G.ニューコングレスにも繊維はあり、これだけを見るとどちらもザラザラとした刺し心地なんじゃないの?と思われる方もいらっしゃると思います。そこで、布のたて糸を1本ずつ外し、先端をほぐした下の写真を見ていきます。

(G.ニューコングレスは綿、A.麻252は麻)

 織り糸の(特徴の)集合が布であることを考えると、A.麻252の織り糸に付随する繊維の長さ(長く太い)や量と、G.ニューコングレスの織り糸に付随する繊維の長さ(短く細い)や量の違いからも、刺し心地の違いが想像できるのではないでしょうか。実感としては、A.麻252の方が糸が布の間を通っていくときにザラザラ摩擦が強い印象があり、G.ニューコングレスの方がスルスルと摩擦が弱い印象があります。

◆麻252に、また刺してみたい!と思ったさとの坊おすすめの糸
 全て同日に運針で同じこぎん針を使用して刺した感想です。私の技量が見た目や感想に影響することをご理解いただき、読み進めていただきますようお願いいたします。


⚪︎1.つきや こぎん糸(8本合わせ)
刺し心地
:ザラザラ進むが、糸の滑り具合は心地良い
見た目:こぎん糸の状態も綺麗で膨らみ等も均一
感想:つきやこぎん糸は高品質だと普段から感じていますが、改めて刺してみて、素朴な風合いの布に対しても上品な見た目になって素敵だと思いました。

⚪︎2.オリムパス こぎん糸
刺し心地
:スムーズでストレスを感じない
見た目:引き揃えずに使用し、開封時の状態と変わらずふっくらとしている
感想:引き揃えて使うことを推奨している甘ヨリのこぎん糸です。袋に入った状態のまま使用すると、布によっては解けたり太さにばらつきが出ますが、空気を含んだ糸の集合体が、布の穴を通過する際に自在に空気を吐き出したり吸い込んだりして状態を維持している感じで、刺していて面白かったです。

⚪︎5.津軽工房社 津軽こぎん糸
刺し心地
:スムーズで心地良い(オリムパスこぎん糸の刺し心地と似ている) 
見た目:糸のヨリもほどけず、状態もほぼ変わらず膨らみが均一
感想:津軽こぎん糸は表面が滑らかで手に持った感じもすべすべとしていて柔らかく、糸のヨリの中に適度に空気を含んだ印象を持っていましたが、表面の滑らかさが麻布の繊維をうまくかわしている感じがして(実際にどうかは不明ですが)、気持ちのよい刺し心地でした。

⚪︎その他感想
 オリムパスのこぎん糸との相性が想像していたよりも良かったのが楽しい発見でした。布の織り糸自体はほぼ動かないため、太めのこぎん糸だと糸が通るときにきつい感じがしたり、糸こきが難しい感じがしました。それでも、どのこぎん糸、刺繍糸もそれなりに綺麗な見た目になっているように思います。

◆麻252で楽しめるキット
▶️季節を楽しむこぎん刺しキットの「虎/寅」麻布

◆次回の布はファンシーヘッシャン

 こちらも、面白い発見がありました。

 

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◆布と糸の相性について
 布と糸を知る3でも触れましたが、感覚は個人差があり、当然ながら好みも個人差があります。相性に関しては、布と糸の組み合わせによって刺し心地が異なることをお伝えしたい気持ちで書いています。布や糸の第一印象で距離をとってしまうのは、勿体無いと感じているのも今回の調査を行う理由の一つです。マイナスではなく、プラスを知って行くのが調査の目的です。
 今回調査対象の材料はこぎん刺しの材料として知られているものの一部ですが、それぞれの布、糸に特徴があり、その特徴は組み合わせ次第で大きな魅力になっていくことをお伝えできたらいいなぁと考えています。こんなふうに刺し方を工夫したら、この糸もとても刺しやすいよ!という段階まで進めたら理想ですが、それはまた機会があったときに取り組みたいと思います。
 ノートにメモを取り、このブログを書いていますが、できるだけ調査日の感覚を覚えているうちにブログに残したいと思いました。ブログの更新間隔は不定期になると思いますが、ぜひまたお立ち寄りいただければ嬉しいです。

◆調査内容に関して
 個人でこぎん刺しをお楽しみいただく方に向け情報で、さとの坊が自宅保管した材料で調べた内容です。保管環境によりお手持ちの布とカウント数のずれや重量に相違が出る場合があると思いますが、ご了承ください。また、写真の無断使用はお断りいたします。 楽しいこぎん時間になりますように。

Satonobou